なかなか観ないオーストラリア映画を鑑賞。
オーストラリアの映画とか人生で何本観たのか覚えてないが、この映画を見てる限り、普通に面白い模様。
タイトルの「ムーンロック・フォー・マンデー」は、「ムーンロック」は架空の場所で、「マンデー」は物語に出てくる病気の少女の名前。
やり場のない悲しみを背負う青年”タイラー”と、子供ながらに自分の限りある命を自覚して刺激を求める”マンデー”の友情物語。
[好きなとこ]可哀想な2人を観ているのに「大丈夫だ」という気持ちになる映画
タイラーは事故死した母親の形見の指輪が売られている宝石店を襲い、指輪を奪還したは良いが逃げる最中に警官を1人射殺してしまう。
マンデーは父親と逸れて乗ってしまった電車で逃亡するタイラーと遭遇し、印象が良かったためにタイラーについて行くことで2人の旅が始まる。
少女・マンデーは病気の影響で外出が許可されておらず、外出は週1の病院に行く時だけで、外の世界を見たい欲求が強い。
マンデーの旅の目的は「ムーンロックという場所に行けば自分の病気が治ると信じている」からで、タイラーの目的は「マンデーをムーンロックに連れて行き、そこで留守電で口合わせした父親にマンデーを引き渡した後に自首する」ことである。
この作品では旅の途中で車泥棒や強盗をしながら食い繋ぐシーンが続くが、緊張感やスリルよりも温かみや人愛おしさを感じるから不思議である。
「悪いことしながら食ってる人にも色んな事情があるんだな」と悲しい気持ちになるのと同時に、どんな事情があれ、”被害にあって傷ついた人にちゃんと償ってくれなきゃ結局は認めるわけにはいかんぞ!”と、制御本能も掻き立てられる。
子供と観れるロードムービー
ロードムービーの多くが性的、不潔、刺激的なシーンが含まれがちだが、この映画にはそれがない。
タイラーが車を盗んだり、宝石店や薬局を襲うシーンがあるが、過激な演出にはなっていない。
最後、タイラーは射殺されてしまうが、撃たれる瞬間のカットはなく、血の量も抑えられている。
喫煙や飲酒、殴られるシーンぐらいはあるが、全体的にお利口な印象。
小学生ぐらいの子がロードムービーデビューするのに都合の良い映画だと思う。
タイラーの赤のコンバース
主人公のタイラーが履いてるのは赤のコンバース。
水色の薄いデニムに適当なシャツと合わせた格好。
坊主頭の逃亡犯が着る服にしては爽やかな印象。
もっとワイルドな感じにいっても良さそうだが、子供が怖がらない良いお兄さん風のバランスに寄った感じ。
赤のコンバースが”普通の若者”感を強く出してて、タイラーの根の良さを引き立たせていた。
最後、撃たれて倒れた際、長旅を共にしたコンバースのソールがチラッと映り、そこにマンデーが泣きながら駆け寄るシーンがなんとも切なかった。
生前の彼は何もかもが使い捨て、彼に最も寄り添い最後を共にしたのがコンバース。
”彼にはそれしか所有がない”という悲惨さが強調された。
[嫌なとこ]伏線放置魔と実話っぽさ
ロードムービーの醍醐味といえば、旅を通じて出会った人や、学んだ情報、得た品々がどこかで意味を成す伏線回収である。
この映画では、伏線のように見えるシーンがいくつもある。
人に信用される握手を教えてくれたゴルフ男、車を奪った訳ありの父と娘の親子、恋の予感があった薬剤師、マンデーが可愛がっていたうさぎなど。
どれも見事に”流れ”のまま終わって驚いた、ここまで繋がりを無視して流れていくのかと。
ただ、車中の2人の会話に「車の後ろが過去で、車より前が未来」という言葉があり、もしかしたら”過ぎ去ったことが過去になること”が、この映画なりの伏線回収だったのかもしれない。
実話のような演出が紛らわしい
映画の最後、黒い画面に白文字で「この後マンデーは〜歳まで生きた」「パスポートには22個のスタンプが押されていた」と、あたかも実話であったかのような演出がある。
一瞬、「え、実話なの?」と思って調べてみると、どこにもそのようなソースはない。
映画の公式な紹介ページにも、”実際にあった物語”というようなフレーズもない。
オーストラリアの検索エンジンなどで調べてみたが、この映画はあくまでフィクションの模様。
日本のサブスクなどの口コミを読んでみると、映画を実話だと勘違いしてる人のレビューが多くあった。
当たり前だ!
「ムーンロック・フォー・マンデー」の概要
シドニーに住む少女マンデーは、父親とホームスクーリングをしているため、外に出るチャンスは週に1回病院に行くことだけ。ムーンロックが自分の病気を治してくれると信じるマンデーは、病院帰りの電車で少年タイラーと出会い、ムーンロックへ向かう旅をする。
タイトル | ムーンロック・フォー・マンデー |
年度 | 2023年 |
国 | オーストラリア |
ジャンル | ヒューマンドラマ寄りのロードムービー |