Beauty and the Beast(2017)

ゴールデンウィーク中に観に行った映画だが、生まれて初めて映画チケットを予約購入した。

同伴者が家に泊まりに来てくれる予定だったのでレイトショーを観に行こうと決約束しており、観る作品はずっと前から観たいと言っていた「美女と野獣」に決めていた。

この作品は公開前から話題がすごく、初動の動員数がアナ雪を超えていたということで、公開から数週間経ったレイトショーであっても良い席が難しいと懸念して予約購入した。

会員だったので会員から予約したのだが、なかなか自分のパスワードを合わせてログインできずに焦った記憶が…。使うはずないと思っているパスワードをいざ使うと毎回このパターンだ。

なんとか中央付近の席で予約購入したが、いざ映画館に入って席に着くと、想像していたよりも前で焦った。しかし、映画が始まってみると、目の位置が絶好に良かった。意外な発見。


・ストーリー

名作ディズニーアニメ「美女と野獣」を、「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソン主演で実写映画化。「ドリームガールズ」のビル・コンドンがメガホンをとり、呪いで野獣の姿に変えられた王子と美しく聡明なヒロインのベルが惹かれ合っていく姿を描く。魔女に呪いをかけられ、醜い野獣の姿に変えられてしまったひとりの王子。魔女が残していった1輪のバラの花びらがすべて散るまでに「真実の愛」を見つけなければ、永遠に人間に戻れなくなってしまう。希望をなくし失意の日々を送っていた野獣と城の住人たちの前に、美しい町娘ベルが現れる。自分の価値観を信じて生きるベルは、恐ろしい野獣の姿にもひるまず、彼の持つ本当の優しさに気づいていく。王子役をテレビシリーズ「ダウントン・アビー」のダン・スティーブンス、町一番のハンサム男ガストン役を「ホビット」シリーズのルーク・エバンスがそれぞれ演じるほか、燭台のルミエール役でユアン・マクレガー、時計のコグスワース役でイアン・マッケラン、ポット夫人役でエマ・トンプソンが出演。


・オープニングの城がシンデレラ城ではなく美女と野獣のお城

ディズニーピクチャーの映画といえば、オープニングからシンデレラ城が登場するのがお決まりであるが、この作品は違った。

オープニングでいきなり見慣れない、小さな光の当たったスポットが登場し、そこから少し引いて、シンデレラ城とは違うお城の天辺が見えた。

「あれ?シンデレラ城じゃない?」と思っていると、そのまま登場したのは美女と野獣の横に広い構えのお城であった。

この時点で感動し、同伴者に「シンデレラ城じゃない」と話しかけてしまった…笑

さらに感動したのは美女と野獣のお城が登場してから、そのまま引き絵で赤い薔薇が登場し、物語がスタートしたこと。

このフライングスタートに妙に感動した。さすがはディズニー様の演出だ。

これからディズニーランドに美女と野獣のお城が増設されるとニュースになっていたが、この作品でのインパクトで話題はさらに加熱しそうだ。


・ベルの住む狭い街

ベルは長年住み慣れてる街にウンザリしながらも、本の虫になって世界中を旅した気分になって気分を紛らわせている。

▼しかし、ベルの住む街はのどかで、色んなお店が揃い、花景色や石造りの家が芸術的。イタリアかパリの田舎町をさらに洒落させた感じ。

「ここの街の中だけの物語で面白そうだわ」と思うぐらい、観ていて楽しい街景色であった。

映画の初めからミュージックテイストで街を回るベルは、かなり幸せそうに見えたが…。

ベルの設定年齢が気になるが、仮に十代の女性であればわがままに思えるし、20代の女性であれば仕方ないのかなと。

ベルがあの街にウンザリしてるのは、じ自分を「変わり者」だと言って誤解してくることと、全員の男に会いながらも恋焦がれることがなかったことが根底にあり、街そのものが邪悪かと言ってたらそうでもないと思った。


・お城の小物

魔女に呪いをかけられたお城は、王子だけでなく家来たちも異物に変身させられている。お城の内部は、舞踏会三昧だった過去とは似つかない、ホーンデットマンションのような内部に変貌してしまっている。

王子が野獣に変えられたのは承知だと思うが、家来たちが変えられた時計や家具などの小物のセンスがすごい凝っている。

▼ゴールドを基調にした高級アンティークのような小物たち。アニメよりも彫刻が立体的で、立派な芸術品のようになってお城に溶け込んでいる。

擬人化とはまた少し違うが、動く家具たちのファンタジーとの調和がすごく自然で美しく思えた。小物たちの性格がわかってくるにつれで、あの暗くてホラーなお城が愛おしい場所に思えてくるから不思議。

最後に魔女が魔法を解いてお城が過去の姿に戻るシーンは内心勿体無くも思えた。ベルと家来と野獣の友情や愛情が育まれた場所が消えてしまったのも当然なんだから。


・音楽と美術と

自分がこの映画のチケットを予約する際、字幕にするか吹き替えにするか迷った。いざ鑑賞してみると、想像以上にミュージカル色が強い作品だったので、字幕にして正解だったのかなと。

ミュージカル系は苦手な方なのだが、その理由には煩わしくて不自然な表現が多いからだ。しかし、世界観も対人関係もファンタジー一色のこの作品では、聴いていて疲れるシーンなどなく、むしろ説明の難しい感動や涙を誘った。

バロックテイストなオルガン演奏などを聴いてると、無性にMALICE MIZERが聴きたくなり、帰宅後ずっと部屋で流していた。MALICE MIZERの楽曲と美女と野獣の音楽には、何か共通するものがあると勝手に思っている。

ベルの住む街と野獣のお城と、凝りに凝った世界観は圧巻だったが、各キャラクターの衣装もすごかった。アニメ版の衣装をそのまま実写にするにしても、そのアレンジがすごい!

▼ベルの普段着はアニメだと質素な青いデザインのものだが、実写だと刺繍など細部のデザイが凝っている。野獣やガストンなど貴族衣装のコージャス感もすごく、美術の豪華さに負けじと溶け込んでいる。

▼衣装替えや踊るシーンでの華やかさと、それに負けじと美人なエマ・ワトソンの美貌も素晴らしい。家事を迅速にこなし、馬を乗りこなし、賢くて誇り高くという、原作からのイメージを体現するって、彼女の素材そのものが夢のようなモノなのだろうか。

また、ベルをおもてなしする家来たちの食卓のシーンも圧巻。まるでディズニーランドにある「ミッキーのフィルハーマジック」にそっくりであった。(調べてもみるとアトラクションが切り取っただけだと)


・すすり泣く声が聞こえるシーン

ここぞと言って泣けるシーンがないのに、自然と涙が出てくる、なんとも不思議な映画。ここ数年間、映画館で涙していなかったので、自分でも驚いてる。

自分はベルが野獣を受け入れ始めて、野獣もベルに優しくなり始めて、心が通い始める過程のシーンで自然と涙が出た。なぜあそこで涙が出たのか…。

お城に軟禁されたベルと、ベルと野獣が愛に目覚めることを期待する家来たちと、少しずつベルに心開く野獣と、どのシチュエーションも自分たちの生活には無縁で感情移入のしようがない。「実は自分も過去に〜」と自己投影するような恋愛映画とは別物で、完全なおどき話のファンタジーだというのに、あれだけの大人たちが泣いてたのは衝撃。

劇場ですすり泣く場所がそれぞれ別にあるのが面白かった。自分が入った時のお客さんのほとんどが30前後の大人であったが、ベルと野獣の距離が縮まれば縮まるほど、涙の声が聞こえてくる、非常に奇妙な光景であった。

ベルと野獣が互いの良さに心境の変化を音楽で表現しており、野獣が次第に優しく等身大の紳士に見えていく様に感動しているように思えた。子供の頃などに観ていた美女と野獣の結末を知りながらも、実際にその幸福な結果に一歩ずつ進んでいく様に「よしよし、頑張れ頑張れ」と、夢の再三の再現に涙していたのかなと。

知らないストーリーを観て感動するのではなくて、誰もが結末を知る王道のおとぎ話の実写で涙が出るのかだから、それはかえって究極に純粋な感情をおびき寄せているのではないかと。大人たちを夢を観る子供に戻したのは、この「美女と野獣」という作品に対する尊い気持ちがあったからこそであったと自分は思った。

そして、ベルと父親の複雑な父子家庭にある絆にグッときた。娘を譲らない父と、父親を意地でも守る娘と。ディズニーらしい綺麗事のようにも思えるが、この映画での生々しい展開を踏まえると立派な大人向けドラマに見えてしまう。


・最悪なガストンが感動の根底?

この映画の圧倒的な悪役といえば、ベルとの結婚に手段を選ばないガストンの存在だ。高慢で意地汚く、周囲の迷惑を考えない身勝手な駆け引きでベルと父を地獄へ追い込む。

登場当初はディズニーあるあるなマヌケで実は良い一面もある平和な嫌な奴だと思っていたが、物語が進んでいくと、尋常でないほど性格の腐った人間だとわかる。

自分の相方を見下したような言動、ベルの父に対する壮絶な仕打ち。最後の野獣を銃で撃ちまくるシーンは、子供には見せたくないほど残酷だ。このガストンの悪役ぶりは、ディズニー映画のパターンを破っている。まるで普通のアクション映画に出てきそうな等身大の最低野郎だ。

しかし、このガストンの圧倒的に悪い印象があったからこそ、ベルと野獣と父のドラマが際立ったのかなと。仮にガストンがマヌケで抜け目のある憎めない悪役だったとしたら、自分はこの映画で涙していないだろう。

何かとファンタジーに生々しい敵対の感情を芽生えさせた面で、ガストンの最低ぶりは最高だった。


・「本の虫」

エマワトソンといえば、どうしてもハリーポッターシリーズのハーマイオニーのイメージが強いが、この作品で演じたベルも、皮肉とハーマイオニーとの共通点が多い。

ハリーポッターでのハーマイオニーは、ガリ勉で読書が大好きで図書室に籠りがちで、ロンなどからは「変わってる」と言われている。この美女と野獣のベルも同様に、本の虫で賢く、街では「変わり者」と扱われている。

また、ヨーロピアンな内装のホグワーツで魔法を習うハーマイオニーと、お城で魔法の鏡を覗くベルの姿も重なって見える。途中何回か「あ、ハーマイオニーに似てる・・・」と思い出してしまった。

読書家のベルが育ちの良い王子がシャイクスピアの作品を知っていることで、自分と通じるものを彼に見出すシーンがある。王子が巨大な書斎をベルに「好きに使っていい」と紹介すると、目がハートになっていた。以降、読書関連で嬉しそうな表情をするベルが再三登場する。

本片手の美女=エマワトソン←この構図が自分の中で根付いたのだが、以降、彼女がおバカな女性を演じる日は来るのだろうか?エマワトソンという女優個人への感想と期待。


・エンディング

エンディングでは登場人物を大きく紹介しながら、字幕付きとテーマ曲が流れる。自分は電気がつくまでに涙を拭きたかったので、なるべく歌詞をじっくり見ないようにしていた。

大人の方が多かっただけかもしれないが、電気が付く最後まで席を立たずにじっとしてる人がほとんどだった。簡単に余韻から抜け出したくない感じか。

レイトショーのなので外のお店は全て締まって静まり返っていた。同伴者がトイレに行ってる間に自分は喫煙所に向かった。喫煙所にも美女と野獣のサントラが流れており、余韻の浸り方として最高であった。